「はじめ塾」は、小田原市の寄宿生活塾です。小学生から高校生まで多様な年代の子が、寄宿や合宿、学習会などそれぞれの関わり方で集い、生活を共にする中で、一人一人が力を出し切ること、仲間と繋がることを学び、生き抜く力を養う人間教育の場であることを大切にしています。
はじめ塾の夏期日課
はじめ塾は毎年7月21日から8月20日の1ヶ月間、夏期日課と称した合宿を、山北町の丹沢山中にある合宿所で行っています。
1ヶ月間丸々参加する子もいれば、その間に行われる様々なWSに合わせて参加する子、部活や家族旅行に合わせて参加する子と自由に参加日程を決めることができます。
この合宿の毎年のテーマは「生活を創ろう」です。
そして今年のサブテーマは「人に出会う」でした。
その目的は一言で言うと「自立した人を育てる」です。
自立した人とは
この夏期日課に目安となる日課はありますが、明確な日課や参加者のグループ、生活の役割分担などは一切ありません。さらに大人がほとんどいない中で、食事や洗濯、生活環境の整理等を子ども達自身でやっていきます。
このような自由な環境では、初めて参加した子達はやりにくさを感じる子も多くいます。そんな時は、かつて自身もそんな戸惑いを経験した中高生のお兄さん、お姉さんが当たり前のようにサポートしてくれます。
また、この生活の様子を初めて見る大人は役割分担ができていると感じる方が多いのですが、数日一緒に過ごすと子ども達が自主的に、そして流動的に動いて生活が成り立っていることを理解してもらえます。
このような生活は、子ども達自身が、自分の目で見、自分の頭で判断し、自分の足で行動する「自立した人」に育つことで可能となるのです。
人に出会う
今年の「人に出会う」というサブテーマ通り、この夏は山北の合宿所に多くのゲストがいらしてくださいました。
風の谷あしがらプロジェクトのメンバーの井手英策先生もそのメインゲストのお一人で、子ども達と親御さんに熱いお話をしてくださいました。「運がいいだけなんだ」、「勉強しなくてはいけないんだ」等々の先生の言葉は字面の意味だけでなく、より多くの衝撃を参加した子ども、大人に伝えたはずです。
参加した中学生の1人は、お話を聞くうちにフツフツと湧き上がってくる熱い気持ちが「感動」なんだと初めて知ったと語ってくれました。
また、先生はお話の後の昼食時、各テーブルを順々に周り多くの子と直接お話をしてくださいました。「先生が自分の話を聞いてくれる」、この経験は子ども達の心をさらに惹きつけたはずです。
大人(今回は井手先生)と生活(今回は食事)を共にすることで、「自分には関係のない向こうの出来事」から「自分の身に起こった実感」に変わる子どもは多いのです。
彼らは本当に得難い経験ができたと思います。ありがたいことです。
人生の種まき
今夏は、井手先生の他にも、自然観察や遊びの達人、能楽師、元関取、食養の先生、画家、音楽家、政治家、法学の先生等々多くのゲストがいらしてくださり、子ども達は様々な刺激を受けるチャンスを持ちました。
そして、さらにそれらのWSの合間に川で遊び、寮で仲間と思い思いの時間を過ごしました。
これらの非日常の刺激が直接的に子ども達に影響を与えなくても、彼らのこれからの人生に様々な種を蒔いてくれたはずです。それらの種の中には将来芽を出さないものもあるかもしれません。しかし、縁やチャンスに恵まれた種は芽を出して、大きく育ってくれることでしょう。種は蒔かなければ、芽を出すこともありません。
それを信じて、はじめ塾ではこのような教育実践を行なっています。
(文-和田正宏(教育))